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2012年 03月 22日
今年もスタディ・ツアーの季節がめぐってきました。例年のように、現地の提携団体「Zdravo da ste」の全面的協力を得て行われるACCスタディ・ツアーは今回で10回目になりますが、今年は2月28日に成田を出発し、3月5日にベオグラードでその全日程を終了しました。大学生を中心とした6名の参加者のうち、5名が初めての参加、また4名が初めてのセルビア共和国訪問でした。
ツアーのプログラムでは、ACCの心理社会支援の主柱である心理ワークショップの研修に加え、実際のワークショップを幾つかの異なる場所と形態で体験してもらいました。「おばあさんの手」実施地域であるセルビア中部の町、ヴルニャチカ・バニャを訪れた際は、コソボ難民女性達との交流と地元の子どもたちとのワークショップを行いました。「おばあさんの手」には、女子美術大学のサークル「糸が結ぶセルビアと日本」が様々な協力をして下さっていますが、今回のツアーに参加した女子美の神山陽子さんと三村有見さんが、「自分たちの活動が本当に喜ばれていることが実感としてわかった」と、感動をこめて話してくれたのも嬉しい事でした。 セルビア共和国は東日本大震災に直面した日本に大変こころを寄せてくれて、セルビア赤十字からは、欧州で一位、世界で五位という高額の支援金がおくられました。こうした事情を反映するように、今回のスタディ・ツアーではベオグラード大学の学生や研究者を対象に、震災の被害や復興状況、また人々の様子などについてのプレゼンテーションを要請され、ACCの松永と共に、参加者の慶應義塾大学法学部二年生の斉藤貴彦くんが、ボーイスカウトの一員として行った現地での支援活動について発表しました。 2月から、ACCはJICA草の根協力事業の委託を受けて、セルビアのオーラ難民センターでの心理社会支援を実施することになりましたが、4日の日曜日には、同センターを訪れてコソボ難民の子どもたちとのワークショップを実施しました。これにはツアー参加者ばかりでなく、JICAバルカン事務所の方たちも参加して下さいました。大勢の日本人の訪問に、子どもたちは歓声をあげて歓迎してくれました。嬉しさのあまり、少し興奮状態の子どもたちは、いつものようにはワークショップに集中できず、ファシリテーターをつとめたZdravo da steのゴルダナさんは、「今日は収拾がつかないわ、どうしましょう」と言いましたが、たとえワークショップが少し混乱しても、子どもたちにとって嬉しいことなら、それでよかったのではないでしょうか。 また、参加者たちはJICAバルカン事務所もお訪ねし、JICAがバルカン地域で展開するODA支援についてのお話を聞く機会にも恵まれました。プログラムでは、セルビアに半世紀近く住まわれている山崎洋氏にコソボの話をうかがう機会も持ちましたが、JICAバルカン事務所でのブリーフィング、山崎洋さんからうかがうお話は、それぞれこの複雑な地域を考える上での様々な視点を示唆して下さったと思います。 NGO活動の意味には色々な側面がありますが、どれも本質的には平和へと向かうムーヴメントのひとつであり、具体的な目標の設定や、活動形態にそれぞれのNGOの個性が表れるのではないかと思います。心理社会支援を活動の主柱のひとつとするACCでは、活動地域の人々と日本の若い世代が直接出会い、交流する体験学習の積み重ねによって、未来を築く次世代の人々に、この世界が今直面している課題を「人間」や「人間同士の関わり」という観点からも考えてほしいという願いをこめて、スタディ・ツアーを実施しています。ツアーを通して、ベオグラード大学日本学科の学生たち3人が通訳として付き添ってくれたのですが、両国の学生たちは一週間という短い時間の中でも、体験を共有し、交流を深めていってくれました。こうしたプロセスもまた、それに向かうひとつの表れだったと思います。 スタディ・ツアーにご協力頂いた代表のヴェスナ・オグニェノヴィッチさん、山崎佳代子さんをはじめとするZdravo da steの皆さま、JICAバルカン事務所の皆さま、ベオグラード大学日本学科の学生さん達に心から感謝致します。ACCではスタディ・ツアーを支援活動の一環としても位置付けていますが、それに新しい風を吹かせてくれた参加者の皆さまにもお礼を申し上げたいと思います。そして最後に、私たちを、心からあたたかく迎えてくれたコソボ難民のおばあさんたちと子どもたちに「ありがとう」と、深い感謝の気持ちを送ります。
by hopeacc
| 2012-03-22 23:08
| ACCニュース
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