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2013年 01月 02日
2012年12月7日から9日までセルビア共和国のブルニャチカ・バニャで開催された現地提携NGO団体Zdravo da ste(ズドラボ・ダ・ステ)のアニュアル・ミーティングにACCスタッフ2名が参加しました。
Zdravo da ste(以下、ZDSと省略)は1992年にセルビアの首都ベオグラードの発達心理学者ベスナ・オグニェノビッチ氏が設立したボランティア団体で、その団体名はセルビア語で「こんにちは」という意味です。 1990年代、旧ユーゴスラヴィアは壮絶な民族紛争下にあり、大量の難民・国内避難民が生まれました。緊迫した社会情勢の中で子ども達の遊びが奪われ、そのことによって深刻な心理的問題が生じていることに危機感を覚えた心理学者たちが集まり、ZDSは難民の子ども達への心理社会支援を開始しました。民族紛争が終結して10年以上経った今現在でも、セルビアに居住する難民・国内避難民の合計は309,577人に上り、そのうちの3200人が公式に登録されている難民センターに居住しています。(UNHCRの2012年1月統計)また、難民センターに暮らす子ども達は貧困や社会的偏見などの理由から閉塞的な生活を余儀なくされています。 アニュアル・ミーティングとは毎年ZDSが開催している2泊3日程度の年次総会のことで、これまでZDSの活動に携わった人々が一堂に会します。今回のアニュアル・ミーティングでは長年ACCを支援して頂いている方々のご協力の下で、セルビア国内の2カ所の難民センターと難民センターに居住していた人々が住む1カ所の公営住宅で暮らす子ども達、合計30名も招くことができました。 12月8日に開催されたワークショップの前半では、子ども達は街へ出てガラクタの山から自分の気に入った素材を見つけ、楽器を作り、パフォーマンスの練習をしました。また、大人達は「静けさ・騒がしさ」「内側・外側」などの反対言葉が書かれた紙から着想を得たパフォーマンスの練習をしました。そしてワークショップ後半では子ども達と大人達が一緒にパフォーマンスを行いました。 ZDSの行う心理ワークショップは子ども達がパフォーマンス、音楽、詩、絵画などの創作活動とワークショップに参加する人々との関わりを通して、自分らしさや他者との調和を実感として得ることを目的としています。「自分は他の誰でもない存在として今ここにいる」、「辛いことも楽しいことも共有できる仲間がいる」その安心感と幸福感は子どもたちの心が健康に成長していくための礎を築く大切な一片になります。 また、9日のワークショップでは2012年11月に福島県いわき市の永崎保育所の園児がブルニャチカ・バニャに住むコソボ難民おばあさん達から贈られたマフラーへのお礼として書いてくれたメッセージカードの紹介も行いました。2011年3月11日の大震災、その後の福島第一原子力発電所の事故はセルビアでも大きく報道されていたため、アニュアル・ミーティングの参加者全員がメッセージカードに込められたエピソードについて真剣に聞いてくれました。中には涙して「福島の人達のために自分に何かできることはないか」と言う人もいました。 ZDSに関わる人々はかつて自分たちの力ではどうにもできない民族紛争という不条理を押し付けられてしまった人々であり、その困難の中で子ども達を守るために20年間も活動を続けてきた人々です。そして、元々は難民としてZDSの心理社会支援を受けていた子どもが成長し、かつての自分と同じ境遇の子ども達を支援する側に回っている青年もいます。そこにはACCが行っている心理社会支援活動が目指すべき姿 ― "希望"があるように感じました。 今後もACCはZDSの活動をサポートし、また日本国内の活動でも子ども達が「自分は他の誰でもない存在として今ここにいる」、「辛いことも楽しいことも共有できる仲間がいる」という実感が得られるような場作りをしていきたいと思っています。
by hopeacc
| 2013-01-02 19:23
| ACCニュース
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