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2009年 09月 06日
「おばあさんの手」では、この夏の終わりから「スタナさんの織物教室」が始まりました。「おばあさんの手」は、手編みや手刺繍、手織りなどセルビア共和国の伝統的な手仕事をモチーフとして、コソボからの難民女性への心理的サポートを目的に始まったプログラムですが、手仕事の中でも、比較的習熟度が低いのが手織りです。恐らくは、織り機の所有に左右される度合いが大きいこともあって、手編みや手刺繍よりもたずさわる人が少なかったと思われます。これを機会に手織りを楽しむグループが生まれてほしいと願っています。
「スタナさんの織物教室」を今年度のプログラムに導入した背景には次のような事情があります。ACCではかねてから、このプログラムが継続的に、難民女性たちの心理的エンパワメントに繫がる効果を持ち得るためには、常に新しい工夫をこらして発展性を盛り込む努力が必要であると考えてきました。それは「こじつけ」ではなく、注意深く受益者と接することにより、まだ表面に浮上していないニーズを把握することにより可能となります。2009年度のプログラムでは、参加者が長年背負ってきた「難民」という自己認識、また「受益者」という社会的役割を転換する試みとして、この織物教室を企画しました。 「おばあさんの手2009」は、高い手織り技術を持つ難民女性に「教師」、そして他の女性たちに未知の技術に挑戦する「生徒」という新しい役割にチャレンジする機会を提供したいと考えました。スタナさんは、92年にクロアチアから難民として逃れてきて、以来セルビア共和国の首都、ベオグラードで掃除婦として生計を立ててきた60代後半の女性です。首都のベオグラードにも難民は多く居住しているものの、地方都市以上に孤立した生活を送っています。こうした生活を長く営んできた難民が、自分の人生の中で培ってきた生活文化を同胞に教える新たな役割を得る事、そのために地方都市に「出張」すること、そして新たに「関係性コミュニティ」のメンバーとなることは、大きなエンパワメントに繫がります。また、教えを受ける他の参加者にとっても、生徒という新たな役割を経験するばかりでなく、同胞の中から新たなリーダーを見出すことで、自らのポテンシャルに目を向ける契機となるのではないでしょうか。双方にとって、それぞれ意味深い新たな体験になる事と期待しています。
by hopeacc
| 2009-09-06 15:42
| ACCニュース
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