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2013年 10月 09日
ACCが2009年からその活動をサポートさせて頂いてきた漆原隆一先生が、天に召されました。横浜雙葉学園の校長を退任後、ご夫妻でカンボジアのシェムリアップに在住され、オー村の子どもたちに日本語や音楽を学ぶ機会を提供するなど、現地に根差した活動を続けてこられた先生を偲び、私個人にとっての恩師である先生の思い出を綴らせて頂きたいと思います。
先生に初めて会ったのは、中学入試の面接のときでした。「あなたの欠点は何ですか?」という質問に「優柔不断で、人に対して断れないところです」とエピソードを交えて説明した私に「でも、それは君の長所でもあるんじゃないかなぁ」と言われたのが漆原先生でした。短所が実は長所でもあるなんて、それまでの人生で考えたこともなかった私は、面接という場を忘れ本当に驚いたことを、今でも鮮明に覚えています。 先生の授業は、手作りのプリントを使い、知識だけでなく大切なものを伝えて下さるものでした。「宗教」の授業は人間とは何か、命とは何か、人が人として生きるために大切なことは何かについて考えさせるものでした。大人になった今、先生のプリントを読み返してみても、素直に「なるほど」と思える内容です。「世界史」の授業では、まるで歴史上の人物に会ったことがあるかのように「すごいでしょ」と興奮しながら語る姿から、歴史の壮大さを感じさせてくださいました。大学入試前、世界史の受講生徒に「うるしダルマ」をお守りとして持たせて下さるなど、親身に生徒たちに対応してくださったことを懐かしく思い出しています。 学校の創立百周年を前に校長に就任された先生は、これまでの古き良き伝統を守りつつ、でもそれにとらわれず時代に合った学校になるために、新しい試みを始められました。「開かれた人、開かれた学校」と語られ、学校には少しずつ新しい風が吹き込みました。節目の年を迎える喜びを感じながら一緒に楽しもう、というメッセージを発信されました。 校長を退任後の2005年、奥様とカンボジアに移住されたとお聞きしたときに、さほど驚かなかったのは、先生らしい決断だと感じたからでした。でもいまになって考えてみると、65歳で初めてカンボジアの地を踏み、一から言葉を習得し、知り合いのいない土地で新しい生活を始めるなんて、体力面でも行動力の面でも、誰もができることではありません。 「多くのキリスト教の学校が、“Man/Woman For Others”を教育の目標として掲げていますが、私たちは更にこれを深めて、人々と共に生きる人間となることを目指す学校になって行くべきでしょう。家庭のため、友達のため、小さく弱い人々のため、貧しい国の人々のためよりも、家族と共に、友達と共に、小さく弱い人々と共に、貧しい国の人々と共に、の生き方です。(「雙葉 第61号 創立百周年特集号」より)」。校長時代に書かれたこの文章を、まさにカンボジアで体現されたのが漆原先生でした。 ご葬儀の会場には、カンボジアで写された写真や先生が残した言葉が紹介されていました。笑顔とパワーにみなぎっていて、とても自由で、人とのかかわりの中で生きることをいつも喜び、楽しんでいた漆原先生。「風」という言葉がお好きだった先生は、まさにさわやかな風を私たちに残して、天に昇られました。先生から最後の授業を受けたような、いろいろなメッセージを受け取ったお別れでした。 奥様が先生の志を継がれてカンボジアでの活動を続けられると、ご友人が弔辞の中で述べておられましたが、ACCは、今後も奥様を通じてオー村の子どもたちへの支援活動を続けていく予定です。 中島麻美子 ※漆原先生を通じてこれまでオー村の子どもたちにACCが行った支援活動については下記の記事をご覧ください。 「届けまごころ、ピアニカに乗せて」 http://younghopes.exblog.jp/11098774/ 「新しいサンダル ありがとう!!」 http://younghopes.exblog.jp/14070477/ 「カンボジア・オー村の小学校に児童図書を寄付いたしました」 http://younghopes.exblog.jp/14825060/
by hopeacc
| 2013-10-09 23:07
| ACCニュース
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